de Rham cohomology の入口
mathdifferential-formscohomologylecture
導入
このページの核心は、微分形式の閉じている条件と完全である条件の差から、空間の穴を検出することである。
用語と定義
closed form は、d\omega=0 を満たす形式である。
exact form は、ある形式 \eta により \omega=d\eta と書ける形式である。
方針
d^2=0 により、exact form は必ず closed form である。逆が常に成立するとは限らない。その失敗を測る対象が de Rham cohomology である。
局所では、closed form は原始関数を持つことが多い。しかし大域では、穴を一周する積分が残る場合がある。de Rham cohomology は、この局所と大域の差を形式の言語で記録する。
punctured plane の例
\mathbb{R}^2\setminus\{0\} で
\omega=\frac{-y\,dx+x\,dy}{x^2+y^2}
を考える。この 1 形式は原点を除いた領域で closed である。しかし単位円 \gamma(t)=(\cos t,\sin t) に沿って積分すると
\int_\gamma\omega=2\pi
である。もし \omega=d\eta と書けるなら、閉曲線に沿う積分は 0 になるはずである。したがって \omega は exact ではない。
閉じていることは、直接計算でも確認できる。\omega=Pdx+Qdy とおくと、
P=\frac{-y}{x^2+y^2},\qquad Q=\frac{x}{x^2+y^2}
であり、原点を除く領域で Q_x-P_y=0 となる。したがって d\omega=0 である。それにもかかわらず単位円の積分が 2\pi であるため、exact ではない。
S^1 の直感
円 S^1 には一周する穴の情報がある。closed form は局所的には微分として表現できるが、一周したときの積分が残ると大域的な原始関数は存在しない。この差が H^1 の直感である。
S^1 では、一周する向きに沿う 1 形式の積分が基本的な不変量になる。穴がなければ閉曲線は面の境界として縮められ、Stokes 定理により closed form の積分は 0 になる。穴があるため、この縮約が妨げられる。
直感的な説明
穴のない領域では、局所的な循環が 0 なら大域的なポテンシャルを期待できる。穴のある領域では、局所的に curl が 0 であっても閉曲線に沿う積分が 0 にならない場合がある。
反例としての全平面
\mathbb{R}^2 全体では、原点を囲む円も円板の境界である。滑らかな closed 1 形式を円に積分すると、Stokes 定理により円板での d\omega の積分になり、0 である。punctured plane では原点が欠落しているため、その円板を領域内に取れない。この差が位相の情報である。
広げすぎない範囲
このページでは群や層の一般論へは進行しない。入口として必要なのは、closed と exact の差が空間の穴を検出する、という一点である。具体例を基準にしてから、必要に応じて抽象化へ進行する。